2012/02/07

Spiritual Development(精神の発達)


An Interview with Ronald Koetzsch, PhD, July 2011 by Julie Ferre 
(2011年7月 ロナルド・コーチへのインタビュー:
                                                        ジュリア・フェレー)








 










ロナルド・コーチは多くの分野に精通している人物です。2011年の夏開催されたフレンチ・メドウ・キャンプで彼の近況と、マクロビオティックとルドルフ・シュタイナーの共通点に関し彼にインタビューすることができました。




マクロビオティックを始めたキッカケは何ですか?


 1967年、私はハーバード大学大学院の2年生として世界宗教研究センターに在籍していました。日本の宗教と文化を研究するために日本語を勉強していました。その1年前にはベジタリアン食をしており、既に玄米も食べていました。友人がボストンのアーリントン通りにある協会で久司道夫の講義に参加していたので、私も行ってみました。食事療法という考えは常識のように思えたので、以前からの食事を変えることに時間もかからず、苦労もしませんでした。コーヒー、砂糖、ナスなどは食べなくなりました。当時、ボストンマラソンに参加するための準備をしていました。食事を変え、厳しいトレーニングをすることで良い結果を残すことができました。
 学業から少し距離を取り、久司道夫の元に行き、しばらくの間、彼のもとでマクロビオティックを集中的に勉強しました。短い間ですがエレホンを経営し、それから、ニューズベリー通りにある地下の店頭でも働きました。その後、1967年後半、日本へ行き、東京に住む道夫の両親と2カ月ほど生活し、里真先生を知ることになりました。研究生として京都大学に入学するため京都に越し、短期大学で英語を教え始めました。




博士号はいつ取得したのですか?
 
 日本から帰国後、さまざまなことに取り組みました。シカゴにマクロビオティック・自然食品店を開き、マクロビオティックの団体を創設する傍らアウトワード・バウンドでインストラクターとして働き、ニュー・イングランドのプレップスクールで教師をしました。1976年、博士論文を書き上げることを決心し、研究をしながら、もう2年間、日本に滞在しました。1981年にハーバードから博士号を授与され、その時の論文のトピックは「桜沢如一と日本の宗教的伝統」でした。日本の文化と歴史という文脈から見た彼の人生と思想が主題でした。1985年にはそれが出版され、本のタイトルは“Macrobiotics: Yesterday and Today”となりました。




マクロビオティックに関する他の本が出版されたのはいつですか?
 
 その後、1988年に“Macrobiotics Beyond Food”が出版されました。




反響はどうでしたか?
 
 マクロビオティックを始めた最初の頃、自分が食べる物は生活の中で非常に重要な部分を占めているとは思っていましたが、他にも大切なものがあるのだと思っていました。私たちの身体を養い、堕落させ、強い影響を及ぼす他の様々な「食べ物」があります。感情、思い、人間関係などです。そこで、私はこうした全ての食べ物をGOが分類した肉体的生命、感覚的生命、感情的生命などの枠組みを活用し、それらがマクロビオティックの原理にどのように適用できるのかを確かめることにしました。ちょうど同じころ私は、アントロポゾフィー(人智学)の創始者であるルドルフ・シュタイナーとシュタイナー教育の研究をしていました。マクロビオティックと人智学には多くの共通項があり、お互いに補い合うものがあることが分かりました。1988年に出版した本には人智学の多くの考えを紹介しました。




人智学の研究はどのくらいしていたのですか?


 マクロビオオティックの研究の後、1972年から5~6年です。イースト・ウエスト・ジャーナルに寄稿していた際にシュタイナーとシュタイナー教育に出逢いました。ルドルフ・シュタイナーに関する記事を書き、その後、シュタイナー教育について書きました。1989年と1990年、人智学のメッカであるスイスのドルナッハで基礎研究をしました。




フェアオークにあるルドルフ・シュタイナー・カレッジのような場所だったのでしょうか?


 かなり近いものがあったように思えます。シュタイナー思想の学習に加え、かなり芸術的な面、例えば、絵画、製図、音楽、歌唱、劇、詩、彫刻、勉強できるような環境でした。生まれ変わるためのツールとして芸術を学ぶことができる、そうした環境でした。1991年、私はマサチューセッチュ州アーモスト住んでおり、シュタイナー学校協会は私にシュタイナー教育について記事を書いてほしいと頼んできました。彼らは過去に私が書いたシュタイナー、人智学、シュタイナー教育に関する記事を読み、自分ならば大衆とうまくコミュニケーションがはかれると思ったのでしょう。雑誌は「Renewal: A Journal for Waldorf Education」という名前で、学校の父母向けのものでした。1年に2回、約15,000部の増刷し、20年以上たった今でも私が編集長を務めています。




「マクロビオティック・トゥデイ」誌の読者は人智学から何を学べますか?


 一つは芸術の重要性が挙げられます。芸術は治療のツールになる可能性が期待できます。歌うという行為がもたらす効用に関する研究や、絵画、製図、演劇などの芸術活動の結果、力強く高尚な健康体が生まれるという効果に関する研究などもあります。例えば、ベートーベンやバッハの曲を聴く、あるいはラファエロの絵画を鑑賞することで芸術に対する真の評価が生まれ、それが健全な肉体をもたらすのです。
 私が教えているルドルフ・シュタイナー・カレッジでは将来のシュタイナー教師を育成しており、芸術活動は必須の日常活動となっています。歌、音楽、彫刻、劇など、常に何かしら起こっている状態です。芸術は真に人生の一部であり、人間の一部ですが、今日、芸術は消費財に成り下がってしまっています。iPodの中に6,000曲もの音楽を入れ歩き回っていますが、「曲」を携帯することができないでいます。大変悲しいことです。
 手細工や手芸もまた大切です。カレッジでは学生は皆、編物、縫物、木掘を習います。夏のプログラムでは、木掘の授業で学生は小さなハープを造ります。全く経験がない彼らが、3~4ヵ月もすると美しいハープを造り、それを使いハープの演奏を習うのです。そうした経験が大事なわけです。
 人智学が提供する別の側面に首尾一貫した宇宙論、つまりこの世界、人間、人間の運命を理解する方法論があります。シュタイナーの世界観は、カルマや輪廻転生の考えを含むキリスト教の密儀にその土台があります。人智学はまた、我々の高次の認知と道徳的直観の発達を促すことを意図した明瞭な瞑想的訓練も含んでいるのです。




人智学的な食事法へのアプローチとはどのようなものですか?
 
 多くの点において人智学はマクロビオティックと似ています。シュタイナーも穀物が人間の基本的な食べ物だと言っていますし、私たちは地元の食べ物を季節に応じて頂くべきです。概して人智学者も全粒穀物を多く食べます。その中には玄米、全粒パン、野菜、種、ナッツ、フルーツなどを含みます。文化面の影響も見逃すことができないのも事実です。GOは米、豆腐、味噌汁、梅干しなど伝統的な日本の食品を豊富に含んだ食事法を推薦していますが、シュタイナーはヨーロッパ文化の中で生活してきたため乳製品、特にヨーグルトやチーズなど文化的な影響を強く受けた食品を摂るよう指摘しています。蜂蜜も貴重な食べ物だと指摘しており、食べ物の重要性に関するハッキリとした理解を持っていました。彼の弟子が精神的な高みを極めていない理由を聞かれシュタイナーは、栄養の問題だと答えています。




彼自身はどのようにアプローチしているのですか?


 精神的向上について言えば、彼はベジタリアン食と禁酒を提案しています。穀物と野菜の質の重要性についても強調しており、それはバイオダイナミックと呼ばれる、ある種の有機農法の開発に繋がりました。バイオダイナミック農法を実践している農家は全世界に何千とおり、彼らは殺虫剤や化学肥料を一切使いません。肥料を使わず、特別な調合剤を使うことで土壌と植物を活性化さえようとします。例えば、タンポポの葉の部分と他のハーブを牛の肥料にまぜ、牛の角の中に入れ、冬の間それを地中に埋めておきます。春にそれを掘り出し、薄め、レシピに従ってかき回し、植物や堆肥の上に吹きかけます。こうした調合剤が10種類ほど存在し、シュタイナーによればこうした調合剤により宇宙のエネルギーを地面と植物に引き寄せることができるのだそうです。産業的な農法は地面を痛めます。土壌の回復が不可欠であり、それにより高品質な食品が育ち、結果、精神活動が助長されることになるのです。




シュタイナーが強調したいことは何なのでしょうか?


 基本的なメッセージとして一つ挙げれば、我々は自分たち人間に対する精神的な理解度に応じ人間の文化を更新していかなくてはいけないということです。その根拠として彼が指摘しているのは、人生におけるあらゆる側面は変化するという点であり、宇宙の創造物である全ての人間はユニークかつ神聖で、一人一人、精神的古郷と運命を抱えているということです。




彼も神智学者ですよね?彼の原点は何だったのでしょうか?


 彼は子供の頃に始まり、生涯を通じてスピリチュアルな体験をしました。彼が40歳にさしかかった西暦1900年頃、当時の住居だったベルリンの神智論学会へ招かれ唯心的な事象について教鞭をふるいました。聴衆は彼の講義を気に入り、アニー・ビサントは神智学会のドイツ支部会長を依頼しました。シュタイナーは神智学の方針に従うのではなく、あくまでも彼自身が体験した事を教えるという条件で承諾をしたのです。
 彼の講義は他の神智学者の講義とは何かが違いました。特にアニー・ビサントとコロネル・レッドベターが若いインド人青年(後にクリシュナムルティとして知られた)をキリストの再誕生として世に紹介した後は、緊迫感のある空気が流れていました。そのとき既にシュタイナーはキリストを体感していたのです。彼はキリストの化身は一人しか存在し得なく、もう現に存在したので再度起こり得ないと感じました。そして彼は神智学会との関係を断ち切り、人智学会を始めました。
 神智学と人智学は西洋で起きている事への見解という点では似ています。19世紀後半はダーヴィンの進化論、科学技術や唯物論的哲学が主流となりました。西洋にあった精神と宗教の伝統は侵食され、霊的意識は失われました。
 神智学会は1875年に東洋(特にインド)からの精神論的な概念と理論を西洋に取り入れることを目的に設立されました。アニー・ビサントとマダム・ブラヴァッスキーはヒンズー教の概念、仏教の概念、瞑想習慣、ヨガと他の要素を取り入れる事において多大な影響力を発揮しました。欧米全土には神智学センターが存在しました。彼らと同じくシュタイナーは物質主義と定命説に否定的でした。彼は18歳の時にほんの一瞬だけ叡智的な師匠に遭遇しました。




彼の叡知的師匠とは誰なのでしょうか?


 シュタイナーはその一度だけあった師匠を「M」と呼んでいます。シュタイナーはその師匠に聞きました。「私は何をすればよろしいのでしょうか?」するとMは「物質主義のドラゴンと闘いなさい。」と答えたのです。その答えはシュタイナーの人生目標でした。そしてシュタイナーが「どうやって闘うのですか?」と質問すると師匠は「ドラゴンのお腹の中へ行きなさい!」(物質的な世界観を理解した上で!)そして「角を用いて世の中の意見の矛盾を取り除きなさい!」(宇宙と人間の叡智的視野の教育者として世界に立つのです!)と答えました。
 私達の現代文明の全ての見解は人類の物質的理解に基づいています。シュタイナーは人類とその宇宙精神の精神的視野に教育、農業、医学、その他を与え、
それらをどのように人間の叡智的理解と共に変換させるかに努めました。
 シュタイナー教育とは人間の叡智的理解を基盤とした教育のあり方です。




多くの人がシュタイナー教育について知っていてシュタイナーは学校教育だけに関わっていたと思っています。彼の他分野での影響は何がありますか?


 ホリスティック医学的見解の人智学の延長線上にある医療があります。様々な芸術療法と他のホリスティックかつ浸潤性のある療法とミネラルや植物から作られた有効な治療薬があります。外科医は全員、シュタイナーの自然治癒理論を更に何年も研究した熟練の医学博士達です。またはキャンプヒル運動により主に続けられてきた研究進展への挑戦を兼ね、ダウン症や自閉症といった疾患を持つ患者達を診ました。世界には村民(障害のある人たち)が「同僚達」と健康維持に役立つ生活を共に分かち合いながら共同生活をしています。そこで働く「同僚」は村民達が障害を克服し、幸せに実り多き人生を送る為の手伝いをしています。
 他にシュタイナーが影響を与えた分野は芸術でした。彼は有機機能性建築と呼ばれる建築様式を生み出し、偉大な建築家達へ影響を与えました。彼は絵画や演劇にも影響を与え、更に4作の「神秘劇」を完成させ、その演劇は現在も毎年スイスのドルナッハで上演されています。彼には社会組織や経済についての考えがありました。シュタイナーは人類の発展と生活の実質的な全分野において独特かつ斬新に伝えたい事がありました。




それに対してGOはどのように反応しましたか?
 
 そうですね。その事に関しては私の最初の著書で述べています。GOが欧州に住んでいた1956年、彼は人智学者により運営されていたホテルに滞在していたのです。彼は壁にあるシュタイナーの写真を見て彼が何者であるかを尋ねました。宿主はGOにシュタイナー(1925年没)と人智学について話しました。そしてGOはドルナッハへ行き、フランス語でシュタイナーの本を読みました。そして後に彼は西洋で真の精神文明に出合ったと述べています。




GOの主張は何ですか?もしシュタイナーの主張が精神的理解による文明の更新だとすれば、GOの取り組みをどのように説明しますか?
彼は似た見解を持っていました。両者とも人類が個人と社会的健康または「完全な健康」に達成する手助けをしようとしていました。食物は日本の伝統文化を最大限に引き出し、更新と発展をさせる為の手段だと力説していました。長い間教えてきた人生を通してGOは病人と接する事が殆どでした。彼等はマクロビオティックに惹かれました。なぜなら時には病気や困難が想像を絶するものであったからです。GOは自分自身の教授法をそのレベルまで持って来ざるを得なかったのです。彼が7つの法則(感情、美学、精神など)について語るとき、その主な中心は食べ物と食べ方の話でした。




マクロビオティックを実践されている方でシュタイナーの本を読んだ事のない方にはどの作品を勧められますか?


 インターネット上のシュタイナーに貢献された沢山のウェブサイトから情報が沢山得られますよ。グーグル検索で「ルドルフ・シュタイナー」若しくは「ルドルフ・シュタイナー アーカイヴ」と入れるだけです。また書籍も沢山あります。シュタイナーは40冊の本を執筆し、約6,000回の講義を行いました。ほぼ全ての講義は速記、清書され書籍化されました。シュタイナーの文献は全部で350巻以上になります。
 4冊の本には彼の世界観が書かれています。その1冊が「Knowledge of the Higher Worlds and Its Attainment」です。最初のパラグラフでシュタイナーは「世界の頂点を悟る能力が全ての人類に潜在する。」と述べています。この本は高い悟りと認識を開拓するためのガイド的な書籍です。そして「神智学」という本は自然と人間の運命への彼の見解が書かれた入門書です。他の基盤となる「Occult Science, An Outline」という文献には「神智学」の中でも言及されているようにこの世界と人類がどのように誕生したかが記載されています。かなり宇宙的ですね!そして「Christianity As Mystical Fact」ではカルマや輪廻天性を含む、宇宙的なキリスト観またはシュタイナーの奥義について解説しています。これは伝統的で主流なキリスト教の教義からは幾分と異なります。シュタイナーには産まれた時から自然透視力が備わっていました。彼は魂の現実を察知し、死人の魂やオーラを見ることが出来ました。彼はローマカトリック教会で洗礼を受け、公には一度も教会を離れませんでしたが、彼のキリスト教と教会に対する見解はとても批判的なものでした。世紀末頃、彼は自身の中にキリストが降臨する経験をすることで、キリスト生誕は人類が進化する為の中心軸であることが明確になったのです。




最後の質問です。人生にはどのような意味があると思われますか?


 そうですね。自分を満喫し、楽しみ、人間である事やこの世界の美しさと謎を嗜むためにあると思いますね。そして明るく前向きな意味で精神的、秩序的、社会的、知的、実用的、技術的、感情的、身体的であると行った全ての私達人間の持つ許容を発展させる事に対する約束でもあります。ルドルフ・シュタイナーは美しい考えの持ち主でした。彼は今この時の各々の最初の挑戦が私達を自由へと導き、自己愛から脱却させるのです。言い換えれば自身のエゴイズム、自分自身の興味を捨て他者へ無欲を与える喜びを見つけるのです。人間であるという事は慈悲と感情移入と愛情の許容量のレベルを発展させることなのです。


美しい話ですね。ありがとうございました。



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Spiritual Development(精神の発達)」は日本CI協会・編集部が和訳したものです。


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